経済学は、大学で学び社会人になった時、何か役に立ったと言える人はいるだろうか。
簿記や会計学と違って、恐らく、経済官僚、エコノミスト、経済記者、金融関係など特定の仕事以外では、直接的に役に立ったという実感はないに違いない。
ところが、私たちの生活に直結している国の経済政策となると、話はガラッと変わる。国の多くの政策、それが経済政策でなくても、税制や財政支出に関係しているので、経済学と深い関係がある。
経済学者が、自説を唱え、政治家や官僚がそれを採用する時、その政策が本当に妥当かどうかを判断する基準は、経済理論でしかない。この局面において経済学の重要性が忽然と現れ、自覚されるのである。
政党の好みや政治家の人間性などではない。小泉首相は人を惹きつける魅力的な人物あった。今でもご婦人層から人気が衰えないが、そのことと彼の信ずる経済政策の是非とは無関係である。
説得力あるワンフレーズ。明快な方向性の打ち出し。比類なき実行力。私欲のないクリーンイメージ。彼に対する圧倒的支持率で、「聖域なき改革」と称し、各方面の規制緩和と自由化、自己責任の下に福祉切り捨て、郵政民営化など。「改革なくして成長なし」であったはずであった。その結果はどうであったか。周知の悲惨な現実である。人情も人間性も、実行力も、妥当な経済理論とは関係ないのである。経済理論が誤れば、当然結果も悲惨になる。
ところで、新自由主義経済学者はこの現実をどうみているのであろうか。
彼らは、相変わらず、うまくいかないのは規制緩和改革が不徹底だから、もっと自由化しろ、と竹中元金融相は至って元気である。彼らは、悲惨な“現実”が見えないのであろうか?
そうではない。現実が見えないはずはない。真意はこうである。彼らの経済理論に従えば、現実がたとえ悲惨に見えても、これは、実は自由競争は自然的秩序をもたらすものであり、自然の姿であり、なんら問題ない。逆に、弱者を助ける福祉政策は、結局、自然の秩序への不当な介入であり、やるべきでない、と。これが新自由主義の経済理論である。
“現実”はとっくに破綻しているが、彼らの経済理論は元気で正しいのである。何が間違っているのか?現実か、理論か? つまり、役に立たない経済理論も、その再構築なしに、人類の幸福はないことが鮮明にわかるのである。
経済理論の再検討と再構築、これが、本サイトの目指すところです。決して面白く愉快なエンターテイメントサイトではありませんが、我慢して継続的閲覧を、またコメントご意見の投稿をお願いいたします。
2009年12月23日水曜日
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とても興味を惹かれた内容です。小生は「利他の経済学」の構築をしており、その勉強会をやっております。これから、よろしくお願いいたします。
返信削除杉山様
返信削除「利他の経済学」は、私の目指しております「経済学の再構築」と深い関係にあると思われます。
現在主流となっている経済学は、私利を求めるホモ・エコノミクス(もっぱら経済的な利害により、自己の利益をはかる合理的経済人像)を前提にして、規制を取り払って、自由競争させれば、世の中の経済は均衡しうまくいく、という理論でした。これを、レセ・フェール(語源はフランス語)と言います。
さらに、新自由主義では、経済学の原点であった、「経世済民」<ケイセイサイミン:世を経(おさ)め、民を済(すく)う>を大きく逸脱して、超強欲者の(金儲けの)経済学に堕しています。
終には、「トリクルダウンTrickle down効果」(しずくが垂れ落ちるように、一部の成功者のお陰で、残りの多数の人々がそのしずくの恩恵を受ける)が主張されたりしています。
国民(全員)が幸福に暮らせる経済の目指して、これをどう乗り越えてて行くか。これが課題です。
利他の経済学は、今後のあるべき経済政策のコンセプトとして、重要なキーワードと思います。今後ともよろしくお願いします。
とても、同意出きる内容です。自民党政権&小泉政権においては、小泉氏のパフォーマンス好きな人格、竹中元金融相おいては、経済学者時との、経済のコメントが違い政治に関与し舞い上がってしまい、庶民生活の現実及び日本の現状を考慮出来なくなってしまったのではないか、と思われます。竹中氏は、未だに自己の経済論を誇示続けているのは、強者の経済理論と言う事なのでしょうか。
返信削除長谷川様、図星をついたコメントありがとうございました。
返信削除新自由主義を信奉する人は、懺悔転向された中谷巌先生は例外で、多く学者やマスコミは宗教的教義のように信じて主張しています。現実が冷静に見えないようです。
政権は、常に、自己の都合のいい御用学者を集めて、「有識者の諮問委員」などの蓑を使っています。非常に危険です。安全神話を撒き散らし流布した、原発推進の御用学者と同じ構図です。小泉政権は、「経済諮問会議」で、新自由主義信奉者を集めたのです。
新自由主義は、結局、ご指摘のとおり、弱肉強食の制度です。現今の、このグローバルな(地球的規模の)展開について、同志社大学・浜矩子教授は、「グローバル・ジャングル経済」と命名しています。ジャングルは、弱肉強食の世界ですが、それを例えたものです。
しかし、私は、「ジャングル」を超えた世界であると考えています。ジャングルの世界では、強者であっても、天敵がいて、最強の動物が一人勝ちはありません。最強の王者ライオンもハエナワには追い払われます。一定の歯止めが、自然には組み込まれています。
しかし、自由市場至上主義では、「1%の強者が99%の富を占める」という一人勝ちの、恐ろしい状態に至ります。この意味で、ジャングルを越えて、「悪魔の経済システム」と言っても過言ではないと思います。(ブログ2011年1月、第8回参照)http://lucky753.blog62.fc2.com/blog-entry-10.html
自由市場システムには、原子力と例えると分かりやすいです。原子力は莫大なエネルギーを出し、そして悪魔のような放射能の副産物があり、適切な制御なしには決して使用できません。制御不能になったのが原発事故です。
同様に、自由市場システムは、適切な制御がないと暴走しますし、その上、地球環境破壊や、雇用機会喪失や失業、格差拡大や貧困層拡大など、耐え難い副作用を生みます。
制御が適切であれば、うまくいくものも、制御や規制・管理なくして、どの国も、国民の安全な暮らしや幸福は実現できません。
TPPのような「貿易自由化」も全く同じです。我々は、このことに気がつかなくてはなりません。(ブログ2011年11月、第9回参照)。
http://lucky753.blog62.fc2.com/blog-entry-11.html
ご卓見ありがとうございました。